お祭りもどぶろくも何でもやってる自然文化村で何もしない休日を

美山町において、宿泊・キャンプ場・レストラン・石窯ピザ屋などを備えた観光複合施設である「美山町自然文化村 河鹿荘」。そこでフロントマンを務める井上普弘さんにインタビューをさせていただきました。

井上さんは大学在学中にフィールドワークで美山町を訪れたことをきっかけに、美山町に興味を持ち、卒業後京都市内から美山町に移住することを決めたそうです。井上さんが働く美山町自然文化村河鹿荘は宿泊施設、飲食施設、キャンプ場、日帰り入浴、トレッキングツアーなど多様な業態を取り扱う施設です。

フロントマンとして普段はチェックイン・チェックアウトや予約メールの確認などを担う井上さんですが、キャンプ場やレストランのお手伝いなどさまざまなお仕事に携わることが多いのだそう。インタビューを通じて井上さんの興味深い仕事の数々や、それに取り組む井上さんの人柄、美山への思いが見えてきました。

都市と農村地域が交わる2つの地域イベント

鮎祭り

たくさんある業務の一環として地域イベントにも尽力しているといいます。
1つ目は夏に開催される「清流美山の鮎まつり」は地域のお祭りから発展したもので、鮎の掴み取りをはじめ、屋台やステージイベントなどさまざまなレクリエーションが実施されます。このお祭りは河鹿荘を会場とし、観光客も参加するため、都市部からの来訪者と地域住民の交流が図られています。お餅つきやかき氷の早食いなど、地域住民も来訪者も一緒になって楽しめるイベント運営や企画を地域住民の方々と共に行うといいます。

美山かやぶきの里雪灯廊

冬の「美山かやぶきの里雪灯廊」は雪が多く、アクセス方法が制限されるため、閑散期であった冬の時期に、お客さんを呼び込むために住民の発意で始まったイベントです。
ライトアップされたかやぶきの里は台湾をはじめとする訪日外国人観光客からも人気で、現在では京都を代表する冬のイベントになっています。こちらも来訪者参加型のイベントで、来訪者も雪灯籠作りを楽しみ、かやぶきの里を美しく彩ります。美山かやぶきの里雪灯廊にも“美山(住民)と外の地域(観光客)との交流”の構図が存在しています。
河鹿荘で働きながら地域イベントの業務もこなす井上さんはまさに都市と農村交流の結節点にいると言えるでしょう。

どぶろくへの思い

美山町ならではのもう一つのお仕事がどぶろくづくりです。どぶろくとは米と米麹と水を発酵させてつくるお酒の濾す過程をしていないものであり、美山町を含む南丹市は全国に200箇所ほどあるどぶろく特区のひとつに指定されています。井上さんはお酒好きであったことから河鹿荘の運営会社である美山ふるさと会社のどぶろく「雪しづり」の醸造販売を引き継ぐことになったと言います。
全国のどぶろくが一堂に会する「全国どぶろく研究大会」なるものがあるそうで、井上さんらが作るどぶろくは受賞歴が複数あるのだとか。「『おれらめちゃくちゃレベル高いやん』って思いはじめてます(笑)。南丹市には美山以外にも美味しいお米を栽培している地域があるので、市内のどぶろく業者を増やして研究大会などのイベントを開催して南丹市全体を盛り上げて行けたらいいですね。」と誇らしげに語る井上さん。
また、“遊びに来てもらう”というところがミソだと語る井上さんは、どぶろくに代わる特産品の商品開発や、周辺の亀岡市、京丹波町、福井県おおい町など関わりの深い地域と広域的に連携した観光プランづくりにも取り組んでみたいとおっしゃっていました。

「大人が小学生の夏休みを」

幅広い業務をこなし、観光への熱い想いが尽きない井上さんに美山でのおすすめの過ごし方についても伺ってみました。
「美山DMOが掲げている“暮らすように旅をする”というキャッチコピーがすごくいいと思ってます。1日,2日で回ろうとするより長い時間をとってゆっくり過ごしたほうが楽しめると思います。ただ、どこへ行っても地元の美味しいものは食べられるし自然はたくさんあるので…何かをするというよりは何もしなくてもいいんじゃないかなと思います(笑)。サイクリングするとかぼーっとするとか、田舎のゆったりした時間の流れを感じていただけたらいいのかなと。」
「あとは大人が小学生の夏休みみたいなことするのも面白いと思いますね。カブトムシ取りにいくとかホタル見にいくとか…冬なら雪だるまやかまくら作ってみるとか。今はやらないけど子供の頃やっていたようなことを思い出しながらできる場所だし、やってみると意外と楽しいと思います。」
美山移住した井上さんだからこそ、気づける美山での時間の過ごし方を教えていただきました。 美山でしかできないことを見つけて効率よく楽しもうとするより、たっぷりと時間を使って何も市内ことを楽しむのも一つの贅沢かもしれませんね。

暮らしを旅する美山の観光スタイル

美山での「観光」と「暮らし」は必ずしも分けなければいけないものではないのかもしれません。美山の生活に溶け込むようなつもりで観光してみるというのが美山の良さを最大限に体感する方法なのでしょう。
地域の人々に寄り添い、観光で訪れた人々にも触れる河鹿荘の井上さんならではの視点が見えた気がしました。
皆さんも美山町自然文化村 河鹿荘でゆったりと夏休みのような田舎の休日を過ごしてみてはいかがでしょうか?